3月21日、22日の二日間、両国(東京)のKFCビルにて第10回日本獣医再生医療学会が行われました。
学会には200名近くの臨床獣医師、大学関係者、省庁関係者が全国から集まり、学術発表、最新情報の交換と今後の展望についてディスカッションを行いました。
今回は、「口腔内悪性黒色腫が疑われ、CAT療法のみを実施し腫瘍の縮小および良好なQOLを10か月間維持している犬の1例」について発表いたしました。去年まで勤めていた病院との共同発表になります。
発表概要としては、口の中にできたメラノーマという腫瘍に対して、「活性化リンパ球療法」という腫瘍を攻撃するリンパ球を増やす治療を行ったところ、腫瘍がほぼ消失して良好な生活を維持できるようになったワンちゃんについての発表でした。
左 治療前 右 治療後 |
このワンちゃんは高齢で心臓が重度に悪いため、外科療法や放射線療法のリスクが非常に高く、治療選択に苦慮しましたが、麻酔処置の必要ない活性化リンパ球療法を行い、口の中にあった5㎝大の腫瘍が、肉眼では見えなくなるまで小さくすることができました。今も元気に生活しています。
活性化リンパ球療法のながれ (株)J-ARMのサイトより引用 |
これまで椎間板ヘルニアで後ろ足が動けなくなった子に対する再生医療や、悪性腫瘍、難治疾患に対する免疫細胞治療に携わってきましたが、当院でも提供できるよう現在準備をしています。これまでの治療例はコラムでまとめたいと考えています。
再生医療、細胞治療は、これから発展する分野です。現在、さまざまな疾患での応用が期待されており、効果としても少しずつ認められてきています。ですが、すべての腫瘍や難治疾患で効果が期待されるものでもありません。ご相談がありましたら、お問い合わせください。
井上動物病院 井上 快
<追記>
日本獣医再生医療学会より、昨年の発表「脂肪由来間葉系幹細胞による治療が奏功した慢性腎臓病の犬の一例」に対し学会賞を頂きました。関係者の皆様に感謝いたします。せっかくですので次回の「病院だより」でまとめたいと思います。
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