脾臓の腫瘍について
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今回のコラムは、胃の裏側にある脾臓(ひぞう)という臓器の病気についてまとめたいと思います。脾臓は主に、免疫に関する働き、血液の貯蔵と破壊に関する働きをしています。重要な働きをしている一方で、脾臓に問題が起こり、脾臓を摘出してしまっても、生きていける、そんな臓器です。では、脾臓が悪くなるとどのような問題が起こるでしょうか?
”イラストでみる犬の病気”(講談社)より引用 脾臓の場所を赤枠で囲いました。
○ 無症状のことが多い!
症状はほぼ無症状ですが、末期に腫瘍が破裂し、お腹の中で大出血を起こし、死亡してしまいます。かなり進行してくると元気がなくなったり、腹部が腫れてきたりします。また、貧血が起こることが多く、血液検査でも異常が見つからないことが多いです。病状が進行した状態になって貧血などの異常が見つかることがほとんどです。
貧血かどうかを外貌で見分ける方法としては、歯茎や舌の色がピンク色だったものが白くなっていないか、まぶたの内側にある結膜が白くなっていないかを見ることで、簡単に判断できます。
貧血の時は、ここを観察しましょう。
○ 正確な診断には検査が必要!
レントゲン検査、超音波検査、血液検査が必要です。
レントゲン検査
脾臓の大きさと場所を評価することができます。数センチくらいの大きな脾臓の腫瘤の場合、レントゲン検査で見つけることができます。
矢印の先にある丸い陰影が腫瘤です。かなり大きいのがわかります。
超音波検査
最も診断価値の高い検査です。超音波検査では、脾臓の内部にある数ミリの腫瘤も検出することができ、腫瘤内部の構造や他の臓器とのつながりも評価することができます。また、腹水やお腹の中の出血も評価することができます。
腫瘤の内部を超音波で見ています。液体成分に富み、やわらかい構造をしていることが分かります。
血液検査
貧血の有無や貧血の種類を評価します。また脾臓は赤血球の破壊も担っているので、破壊の程度も知ることができます。さらに、他の臓器の機能や血の止まりやすさも評価します。
○治療
脾臓の腫瘍を疑う場合は、開腹手術による脾臓摘出が第一選択となります。術前の検査で、重度の貧血やお腹の中で出血がある場合、あるいは血が止まりにくい状態になっている場合は、輸血を行いながら手術を行うこともあります。
脾臓の一部に7㎝位の腫瘤が認められました。青色:正常な脾臓の部位、赤色:異常な脾臓の部位
脾臓の内側に20㎝位の大きな腫瘤が認められました。重さが1.6㎏ありました。
脾臓全体が腫瘍化しており、もろく、出血していました。また一部他の組織と癒着していました。
○最後に
あまり聞きなれない脾臓の病気ですが、脾臓の病気自体、症状が出にくいことや血液検査だけでは診断しにくいことから、発見が遅くなることが多いです。また腫瘍の場合、悪性のことが多いのも特徴です。脾臓の病気の早期発見には超音波検査での定期健診がおすすめです。8歳を超えたら、一度全身の健康診断をおすすめしています。
井上動物病院 井上 快
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