中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染症について
Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus Infection
重い肺炎などを引き起こし最悪の場合死に至る可能性のある中東呼吸器症候群(MERS)が隣国である韓国で拡大しており、ヒトからヒトへの三次感染の可能性がニュース*1になりました(2015年6月2日)。現在までに日本での発生は確認されていませんが、MERS患者が搭乗していた旅客機(アシアナ航空)が消毒されないまま名古屋市近くの中部国際空港までフライトしていた*2ことから、今後、日本への侵入も考え、この病気について現在わかっていることを出来るだけ簡単にまとめました。
○ 中東呼吸器症候群(MERS)って何? 参考:WHO*3(原文英文)
・ 2012年9月サウジアラビアで発見された新規のコロナウイルスによる感染症。
・ 近縁のウイルスに重症呼吸器症候群(SARS)ウイルスがいる。(追記:2003年に日本で話題になった感染症です)
・ 主な症状は呼吸困難や肺炎などの呼吸器症状ですが、下痢などの消化器症状を引き起こすこともある。
・ 致死率は約36%。
・ 主な感染経路はヒトからヒトである。ヒトコブラクダが感染源として重要な保有宿主とされているが、正確な感染経路は解明されていない。
・ ヒトからヒトへの感染は濃厚な接触により起こる。
○ 発生状況 参考:厚生労働省HP*4、WHO*5(2015年6月3日現在)
・ 韓国での3次感染例を除き、すべてが中東で感染したヒト、もしくは感染者と接触したヒトでの発生。各地域での発生事例は以下の通り。
・ アジア(韓国、中国、フィリピン、マレーシア)
・ 中東地域(アラブ首長国連邦、イエメン、イラン、オマーン、カタール、クウェート、サウジアラビア、ヨルダン、レバノン)
・ ヨーロッパ(イタリア、英国、オーストリア、オランダ、ギリシア、ドイツ、フランス、トルコ)
・ 北米(アメリカ合衆国)
・ アフリカ(アルジェリア、エジプト、チュニジア)
○ 症状 参考:WHO*3
・ 無症状や軽度の呼吸器症状から重症急性呼吸器疾患や死亡まで様々です。
・ 典型的な症状は、発熱、咳、息切れ。肺炎も一般的に起こるが、必ず起こるわけではない。
・ 下痢などの消化器症状もある。
・ 致死率は約36%。(1118人の感染のうち423人死亡*6)
・ 高齢者、免疫が低下している人、腫瘍、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの慢性疾患があるひとで重篤化がみられる。
○ 予防と治療について 参考:WHO*3
・ ワクチンや特異的な治療方法は存在しない。
・ 治療は、患者の臨床症状に基づいて支持療法が行われる。
注意点
・上記の感染リスクの高い人々は、ラクダとの接触、ラクダの生乳などを飲んだり、適切に調理されていない肉を食べたりすることは避ける必要がある。
○ MERSに関する情報
・ WHO(外部リンク)
・ 松山州徳 モダンメディア 60巻4号2014年(PDF)
○ 参考
*1 韓国:MERS隔離750人 初の3次感染に衝撃 毎日新聞(2015年6月2日)
*2 MERS患者が搭乗したアシアナ機 消毒しないまま名古屋までフライト ハフィントンポスト(2015年6月2日)
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