膝のお皿が脱臼する!? 犬の膝蓋骨内方脱臼について
この内容は当院HP「健康コラム」の転載となります。
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膝(ひざ)が悪いと、後ろ足を上げてケンケンして歩いたり、ぎこちなく歩いたりすることがあります。しかし、様子を見ていると普通の歩き方に戻ることもあるため、膝の病気だと認識されている飼い主さんはあまり多くないようです。今回のコラムでは、膝の病気でも特に多く見られる、膝蓋骨内方脱臼についてまとめたいと思います。特に小型犬を飼育されている方は注目してみてください。
【膝蓋骨内方脱臼とは?】
膝蓋骨とは、後ろ足にある“膝のお皿”のことで、このお皿が下のイラストのように脱臼することをいいます。内側に脱臼することを内方脱臼といい、外側に脱臼することを外方脱臼といいます。発生頻度としては内方脱臼がとても多く、よくパテラとも呼ばれることがあります。(注:パテラ(=patella)とは膝蓋骨のことです)
講談社 「イラストでみる犬の病気」から引用
本来は「膝蓋骨」は「滑車溝」におさまるのが正常です。「膝蓋骨」の位置に注目してください。
【どんな犬に多い?】
小型犬に多くみられます。特に、ポメラニアン、トイプードル、ヨークシャーテリア、チワワに多くみられます。この病気は遺伝性疾患の一つと考えられているので、生まれつきの病気として持っています。大型犬でもまれにみられることがあります。
【原因はなに?】
生まれつき膝周囲の筋肉、靭帯の異常や骨が変形していることが原因であることが多いです。また、生まれつき以外の原因としては、落下や打撲などによる外傷や、栄養障害に伴う骨の変形が原因となることがあります。
【膝蓋骨内方脱臼のグレード分類】
膝蓋骨の脱臼の程度によって重症度の分類(グレード分類)がされています。グレードにより予後と治療が変わってきますので、現在の状況を把握することはとても重要になります。
【治療法】
・内科的治療法
グレードIまたは症状が軽度なグレードIIの場合、内科的治療が勧められます。具体的には、消炎鎮痛剤の服用を行い、膝を使わないよう1週間から2週間程度安静に過ごします。ただし、若く活発な犬の場合、痛みがなくなることで元気に走り回ってしまうことがあるため、管理には注意が必要です。
・外科的治療法
症状の重度なグレードII以降の場合、外科的治療が勧められます。方法は状況により異なりますが、以下の方法のいくつかを組み合わせて治療を行います。また、術後はリハビリを行い、早期の回復を目指します。
1. 関節包の縫縮
関節を包んでいる組織を縫い縮めることで膝関節の安定を得ます。
2. 縫工筋、内側広筋の開放
内側に膝蓋骨をひっぱっている筋肉を一部開放することで、膝蓋骨の脱臼を防ぎます。必要に応じて内側広筋の開放も行います。
3. 滑車溝の造溝
膝蓋骨が脱臼しにくいように、滑車溝の溝を深くし、脱臼しにくくします。
4. 脛骨粗面の転移
骨の変形がある場合、脛骨の一部を切除し、移動することで脱臼を防ぎます。
5. 関節外制動
関節内の靭帯の損傷もある場合、丈夫な縫合糸を使い、関節を支持します。
ラテラルスーチャー法ともいわれ、主に前十字靭帯の断裂の際に使用されます。
6. 大腿骨へのスクリュウ設置
脱臼による引っ張る力が強い場合、筋肉が過度に引っ張られるのを防ぐために行います。
7. 大腿骨、脛骨の骨切り術
大腿骨の変形が強く脱臼する力がとても強い場合、大腿骨を一部切断し、引っ張る力を少なくするよう回転を加え整復します。
【最後に】
犬の膝蓋骨脱臼は、比較的多く見られる疾患です。ただ、症状を伴わないケースも多く、治療方法も様々です。また治療に対しては、様々な考え方があり、痛みが強く出ているグレードIIやグレードIII以上の場合でも高齢やその他の疾患で麻酔がかけにくい場合、内科的治療を選択する場合もあります。ただ、若い犬の場合だと、内科的治療で一時的に改善しても、高齢になったときにさらに悪化してしまうことも少なくありません。当院では、その子その子によって異なる状況にあわせて、最適な治療プランを提案しています。ご心配なことがありましたら、ぜひご相談ください。
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